春先になるとニュースなどでよく耳にする「啓蟄」。
カレンダーにも「啓蟄」ということは書いてありますが、実際のところ「啓蟄ってなんだろう」と思ったままにしていませんか。啓蟄とはどんな意味があって、何かをやらなければならない行事なのでしょうか?そんな啓蟄について詳しく調べてみました。
啓蟄ってどういうこと?
「啓蟄」とはニ十四節気のなかで春の「立春」「雨水」の時季に続き、3番目にあたる節気のことです。「雨水」から数えて15日頃のことを言います。啓蟄という時は「土の中の虫たちが這い出す頃」とされています。ちなみに毎年3月5日から6日頃になることが多いです。
啓蟄の「啓」は開く、開放するなどといった意味です。また、啓蟄の「蟄」は、蛇やカエルなどが閉じこもると言った意味があります。そして啓蟄は1日だけのものではなく、春分の頃まで続きます。また科学的に言えば「太陽の位置を示す黄経で145度にあたる位置」に時期の頃を指します。
啓蟄の時期になると、まだ気温は低いものの、一雨降るごとに徐々に気温が上がりはじめます。まさに春を感じ始める時期とも言えるでしょう。
また「啓蟄」は二十四節気を更に七十二候に分けると「初候」「次候」「末候」に別れ、初候は「蟄虫啓戸(すごもりのむしとをひらく)」時期に当たります。これは毎年3月6日頃で、冬籠りをしていた虫たちが目を覚ましはじめるといわれる時期です。もちろん虫のみならず、様々な動物たちも徐々に冬眠から目を覚ましはじめます。
次候になると「桃始笑(ももはじめてさく)」時期に当たります。これは毎年3月11日頃で、桃の蕾がほころんで、花が咲いてくる時期です。昔から花が咲くことを「花が笑く」と表現していました。花が春を笑って咲きはじめる時期なのです。
末候になると「菜虫化蝶(なむしちょうとなる)」時期になります。まさに青虫がさなぎを経て羽化して、蝶になる時期です。菜の花のまわりをモンシロチョウやアゲハチョウなどが飛び回る姿は、春を実感し始める姿ですね。
ちなみに2020年の啓蟄は、3月5日から始まります。
啓蟄ってどんな行事があるの?
そんな啓蟄ですが、実際にはどのようなことをするのでしょう。実は啓蟄にすることというのは、主に2つ挙げられます。
お雛様を片付ける
雛祭りが過ぎて。そのまま長く飾ったままにしておくと「結婚が遅くなる」とよく言いますよね。お雛様をしまうのは、啓蟄までにすませるのが良いとされています。啓蟄は虫たちが目を覚まし始める時期で、そのまま雛人形を飾ったままにしていると、お雛様が日光に当たってしまって色褪せてしまいます。また「虫たちが目を覚ましだす時期」ですから、雛人形をしまう箱に虫が湧いてしまったりすることも考えられますよね。そのため、啓蟄までにお雛様を片付けるほうがよいと言われているのです。
菰こもはずし
啓蟄の頃になると「菰はずし」が行なわれます。菰とは、冬になると害虫から木を守るために、松の木の幹に藁を編んだゴザのようにした敷物状に巻いたもののことです。松の木を寒さから守るために菰を巻いていると思いがちですが、実は菰は松の木の害虫対策のために行なうものなんですね。
この菰を暖かくなって虫が出てくる啓蟄の頃に外します。「虫よけのためのものなのに、虫が出てくる時期に菰を外すと、かえって松の木に虫が付くんじゃ・・・」と思いますよね。でも菰で松の木を守る虫は、いわゆる「マツカレハ」という蛾の幼虫で、寒い時期には松の木の中に潜って冬を越そうとします。この幼虫が松の木の中に入ってしまうと、その名の通り松の木を枯らしてしまうので、松の木に巻いた菰に幼虫を集めて木の内部に入るのを阻止する「プロテクター」というか「ゴキブリホイホイ」のような役割をしているんですね。そして春になって幼虫が成虫になる前に菰を外し、菰ごと幼虫を燃やしてしまうということなんです。ただ残念なことに、最近になって菰は害虫駆除にはあまり効果がないことがわかってきたようです。秋の「菰巻き」春の「菰外し」は、今は害虫駆除が目的ではなく、行事として残っているというのが本当のところのようです。
啓蟄に食べるといいもの
啓蟄の時期に旬を迎える食べ物は以下のようなものがあります。
野菜では
- ふきのとう
- 菜の花
- あしたば
- ふきのとう
- 玉ねぎ
- みつば
- わらび
- たけのこ
などがあります。
最近ではハウス栽培の野菜が年中出回って季節感に欠ける気もしますが、春にしか見かけることのない野菜も多いですよね。
魚介類なら
- さより
- さわら
- しらす
- 鯛
- はまぐり
- 青柳
- あさり
などでしょう。
魚介類も野菜と同様に養殖されているものが多いので季節感の欠けるものもありますが、蟄の時期に旬の食べ物を食べて、春を感じてみましょう。
啓蟄についてのまとめ
啓蟄の意味は都心部では日本古来の虫や蛙(昔の人はカエルやヘビなども、全て虫と表現していたんですよ)を見かけることも少なくなり、昔と比べて段々と薄れてきてはいますが、雛人形を片付けたり、菰はずしなどの時期に当たります。まさに春の訪れをいちばん感じることができる時期ではないでしょうか。
徐々に暖かくなり、芽吹く虫や花達を愛でる1年で最も過ごしやすく、気持ちも明るくなる時期なのかも知れませんね。