餞別は「せんべつ」と読みますが、あなたも言葉は聞いたことがあるのではないでしょうか。なんとなく退職する人やお世話になった人へ何かプレゼントをするというイメージがありますが、あなたは正しい意味や言葉の使い方を理解していますか?
例えば退職する人に個人や職場として餞別を送ることがあるかもしれませんが、その時に餞別で失敗をしたくはありませんよね。餞別にはどのような意味があり、またどのようなものを贈ればいいのでしょうか?
ここでは餞別の正しい意味や、最適なものなど、餞別について解説をしていきたいと思います。
餞別ってどういう意味?どんな時に使っていい?
餞別というのは、元々「遠方に旅に出たり、引っ越しや転任などを行なう人に、お別れのしるしという形でお金や商品などを渡すもの」になります。ですので、相手が退職するときにお金や品物を渡す場合は「餞別」という言葉を使うのは正しいのですが、一般的には定年退職や上司が転勤する場合には「御祝」「御礼」などという言葉を使い「餞別」という言葉は相応しくないとされています。
また餞別という言葉を使うニュアンスとして「長期間の別れをする」ときに使われる意味合いがあります。つまり数日間~数週間程度の出張など、ちょっとした短期間の別れの場合は、餞別とは言わず単純にプレゼントや贈り物、などと言ったほうがいいでしょう。
餞別の餞は「はなむけ」とも読むことができます。はなむけの語源は「鼻向け」からきており、「馬の鼻向け」の略のことです。意味は「旅人が旅立つ時に、見送る人が旅人の安全と健康を祈って、旅人が目的とする方向に向けて、旅人の馬の鼻をその方向に向けて祈る風習」に由来します。この別れ際に相手のことを思う馬の「鼻向け」から「餞」になり、現代では餞別は「お別れで送る」ということになり、別れる相手のことを思って何か贈り物を渡すという風習になりました。
退職以外で「餞別」という言葉を使うケースは転勤、就職や卒業などで会えなくなる友人などにプレゼントを贈る場合によく使われますので覚えておきましょう。
餞別として退職者に送るには何がいい?
では会社を退職する人にはどのようなものを餞別として、金額はどのぐらいののものを贈るのがいいでしょうか?
無難な餞別は現金、ギフト券などです。というのも餞別は退職する人の最後の出勤日に渡すのが原則です。会社を退職する日には、退職者が会社で使っていたものを持ち帰らなければならない必要があるために、最終出勤日は結構な荷物を持って帰らなければならないことが多いんですね。
とくに制服を貸与されている企業ならクリーニングして返さなければならないこともありますし、私物の事務用品や電卓などを持ち込んでいる場合は最終日に持ち帰らなければならない荷物がかなりの量になります。そこに餞別で大きなものを渡されると、もらった方も持ちきれないのでタクシーを使わなければならなかったり、自宅宛てに自費で宅配便を使って送らなければならなかったりすることもあるんです。
私も何度か転職をしていますが、餞別で大きな花束をもらったことがあり、満員電車に乗って帰ることも宅配便で送ることもできず、タクシーで帰らなければならなくなった経験があります。
さて退職者への餞別ですが、個人で渡してもいいですし、何人かのグループ(同僚や同じ部署で仕事をしていた人)で渡してもいいですよ。金額の相場としては個人なら5,000円~10,000円程度、グループの場合は人数にもよりますが1グループで10,000円~20,000円程度が妥当な金額です。
ここで気を付けておかなければならないのは「餞別のお返しは必要ない」というのがルールということなんです。つまり「〇〇さんに餞別を渡したのに何もお返しがなかった」ということを考えたり言ったりしてはいけません。もともと餞別の意味は最初にも書きましたが「旅立つ人の安全を祈願する」ということが語源ですから「安全を祈願したから、お返しをください」というのは筋違いな話ですよね。
逆に「とてもお世話になった人だから」と高額なものを贈ってしまうと、あなたが「お返しはいらない」と思って渡していても、相手にかえって気を遣わせてしまう結果にもなりかねません。餞別は妥当な金額を極端に超えてしまわない程度にしておいて、相手への感謝の気持ちを伝えたい場合は、餞別の金額を上げるのではなく、言葉やメッセージカードなどを添えてあなたの気持ちを伝えるようにしましょう。
退職者の餞別に関するまとめ
餞別とは、旅立つ人の乗る馬の鼻を向けて旅路の安全を祈願したことが語源になっているように、昔からある風習が元になっています。昔の人も今と同じように、長い別れになる時は「どうかこれからの道中が安全でありますように」と相手のことを思っていたのですね。おそらくこの風習は「これから旅をする道中だけでなく、旅をする人の人生そのものに災難が襲い掛からないように、また元気でお会いしましょう」という意味も込められていたのではないでしょうか。
一緒に仕事をしてきた仲間が退職して職場を離れることは時に淋しく、辛いものがありますが、人生では「出会いは別れの始まり」と言われるように、出会いと別れは常に表裏一体で付きまとうものです。退職する人と気持ちよくお別れができるよう、またいつか会える日を楽しみにしながら、しっかりと相手のこれからの活躍を思って餞別を渡しましょうね。